分子の極性と分子間にはたらく力

電気陰性度

 共有結合している2種類の原子の間に存在する共有電子対は,どちらか一方の原子にかたよって存在している場合が多い。このように,共有電子対がかたよって存在するのは,共有電子対を引き付ける強さが原子によって異なるからである。この共有電子対を引き付ける強さを数値にしたものが〔 電気陰性度 〕である。2種類の原子の間に存在する共有電子対は,電気陰性度の大きな原子の方にかたよって存在する。一般に,電気陰性度は,周期表で〔 貴ガス 〕を除いて〔 右上 〕に位置するものほど〔 大き 〕くなる傾向がある。(左下)

 
   

結合の極性

 共有結合している原子間では,電気陰性度の大きな原子の方が共有電子対を引き付けている。電子は負の粒子なので,共有電子対を引き付けている原子の方が,いくらか負に電荷を帯びている。このように,共有結合している原子間に電荷のかたよりがある場合,結合に極性があるという。

例)HCl                                                                             

電気陰性度はHClなので,HClの間の共有電子対は,〔 Cl 〕の方にかたよる。 

 ⇒ 電子は負の粒子なのでHClでは,Clがやや〔 〕,Hがやや〔 〕になる。(右上) 

分子の極性

 分子全体で見たとき,結合の極性が打消しあって(結合の極性のかたよりの方向を「→」で示し,ベクトル的に考える),分子全体で極性がなくなった分子を〔 無極性分子 〕,極性が残る分子を〔 極性分子 〕という。

 
例)無極性分子…CH4CO2H2 


極性分子…HClH2ONH3


例題 次の分子は極性分子か無極性分子かを答えよ。

(1) O2  (2) HF  (3) H2S  (4) CS2  (5) CCl4

例題 次の (a) (e) に最も適する分子を,下の@Eから選べ。

 (a) 分子中の電子の総数が最大の分子はどれか。

(b) 非共有電子対の数が最大の分子はどれか。

(c) 分子中の価標の数が最大の分子はどれか。

(d) 三角錐形の分子はどれか。

(e) 無極性分子はどれか。すべて答えよ。

 @ F2  A HCl  B H2O  C NH3  D C2H4  E CO2

 

  (1) 無極性 (2) 極性 (3) 極性 (4) 無極性 (5) 無極性

  (a) E (b) @ (c) D (d) C (e) @,D,E

 

【分子間にはたらく力(分子間力)】

分子間力

分子と分子の間には,互いに引き合おうとする弱い力(イオン結合や共有結合よりもはるかに弱い)が生じている。この力を総称して〔 分子間力 〕という。分子には極性分子と無極性分子があるため,分子間力にはいくつかの種類がある。極性分子,無極性分子に関係なくすべての分子間にはたらくのが〔 ファンデルワールス力 〕である。ファンデルワールス力の大きさは〔 分子量 〕(分子の重さ)とともに大きくなる。そのため,融点・沸点は分子量が大きいほど〔  〕くなる。極性分子では分子全体で見たときに電子にかたより(分子内に弱い+と−が生じる)があるため,極性分子間では,ファンデルワールス力以外に弱い〔 静電気力 〕も生じている。そのため,無極性分子よりも融点・沸点が高くなる。例)F2(無極性,分子量38,沸点−188℃)とHCl(極性,分子量36.5,沸点−85℃)その他,一部の極性分子間には〔 水素結合 〕という結合も生じる。(左下)

   

分子間力と融点,沸点

 氷は水の固体でH2O分子が〔 分子間力 〕によって集まり,規則正しく配列している(結晶になっている)。氷に熱を加えると,H2O分子の〔 熱運動 〕が大きくなり,H2O分子は少しずつ動けるようになり,ある一定の

温度になると配列が崩れ液体の水になる。この温度を〔 融点 〕という。さらに熱を加えると,熱運動はさらに大きくなる。ある一定の温度になると,H2O分子は分子間力を振り切って単独で存在するように(気体の状態)なる。この温度を〔 沸点 〕という。分子からなる物質は,その構成分子の分子間力が大きいほど,融点,沸点が〔 高く 〕なる。(右上)

 
 

例題 

(1) 次の物質の中で,水素結合が生じるものはどれか。

 @ CH4  A NH3  B H2O  C HCl  D HF  F H2S

(2) CH4NH3HClを沸点の高い順に並べよ。また,その理由を述べよ。

 

(1) A,B,D,

(2) NH3HClCH4 

CH4は無極性分子なので,分子間にはファンデルワールス力のみが,HClは極性分子なので,分子間はにファンデルワールス力以外に弱い静電気力もはたらく。さらにNH3には,水素結合も生じるのから。